こんにちは。
先日こちらの記事↓
のアニメ映画で簡単に紹介した「秒速5センチメートル」。
今回はこの作品に絞って紹介しようと思います!
私の個人的な解釈による解説と感想です。
はじめに言っておきますが、長いです。笑
でも、時間の無駄にはさせません!ぜひご一読を!
この映画は
・過去の恋愛から前へ踏み出せない人
・ただ漠然と不安を抱えて生きている人
には刺さるような気がします。解決するかは別にして。
秒速5センチメートルは現在U-NEXTで視聴可能です。
元々綺麗な映像作品ですが、U-NEXTの高画質配信で視聴することで本当に綺麗で引き込まれます。
それでは本編へ!
はじめに
作品概要
秒速5センチメートルは2007年に上映された日本のアニメ映画。
「君の名は。」や「天気の子」で知られる新海誠さんの作品で、
例に漏れず、こちらの作品もとにかく映像美がすごいです。
「桜花抄」「コスモナウト」「秒速5センチメートル」の3本からなる短編連作ですが、
全部で63分と、時間がそんなに長くないので、手軽に観られます。
以下の3人を押さえたうえで視聴いただくと良いかと思います。
「桜花抄」と「秒速5センチメートル」の主人公。
小学3年に東京へ引っ越してくるも、
中学2年の春に鹿児島へ引っ越し、高校まで鹿児島で過ごす。
高校卒業後は東京の大学へ進学、就職をする。
貴樹の初恋の相手。
貴樹が東京へ引っ越した翌年に同じクラスへ転校してくる。
互いに惹かれ合うも、小学校卒業とともに栃木への引っ越しが決定。
高校や大学での生活は明かされていないが、
現在は貴樹ではない別の男性との結婚が決まっている。
「コスモナウト」の主人公。
中学2の春に引っ越してきた貴樹に恋心を抱き、
以来高校3年になった今も片思いをしている。
3編を通して遠野貴樹と篠原明里の関係をメインの軸に据え、
時間や距離の持つ儚さや残酷さを描いた作品となっています。
主題にもなっている秒速5センチメートルというのは桜の花の落ちるスピード。
幼少期の明里が貴樹にその豆知識を披露したのを貴樹はずっと覚えています。
またその際、翌年も一緒に見れたら良いなというような発言があるのですが、
転校を機にそれも叶わなくなります…。
だからこそ忘れられない思い出の1コマであり風景であり、言葉だったのでしょう。
キャッチコピー
どれほどの速さで生きれば、きみにまた会えるのか。
こちらが映画のキャッチコピーです。
キャッチコピーから既に切ない感じが溢れています。
章毎に主人公が設定されているものの、基本的にこの物語の主人公は貴樹です。
なので、キャッチコピーにある「きみ」は明里のことで、
このキャッチコピーから想像できることは貴樹は明里に会いたいが会えないということ。
それなのに彼女を求めてもがいてしまう葛藤とも執着とも取れる貴樹の生き方を端的に表しています。
そんな事前情報を踏まえた上で本編の視聴に移っていただくと、面白さが倍増です!
それでは、各章毎に見ていきましょう!!
桜花抄
貴樹と明里の関係を理解できる作品です。
この作品を見ると
ほっこりもするし、悲しくもなり、初恋を(美化させて)思い出させられます。
ノスタルジックを呼び起こす。そんな作品です。
ストーリー
貴樹の中学1年生の終わり頃を描く作品。
引っ越しにより、小学校卒業後に離れ離れとなった貴樹と明里でしたが、
半年ほど経った夏頃に貴樹の元に明里からの手紙が届きます。
それを機に2人は文通によるやりとりが始まり、2人の時間は再び動きます。
そんな中、今度は貴樹の鹿児島への引っ越しが決まってしまいます。
栃木と東京から一転、栃木と鹿児島という超遠距離となる2人。
そこで、引っ越し前に一度明里に会うために東京から栃木へ行く約束をします。
しかし!!
2人を阻む壁はとどまることをしらず、なんと当日はあいにくの大雪。
電車は大幅に遅延し、約束の時間には当然間に合いません。
貴樹は明里が家に帰っていることを祈りますが、
深夜になって目的の駅に着いた貴樹が目にしたのは、寒い駅で待つ明里の姿。
念願の再会を果たし、
一緒に弁当を食べたり散歩(深夜徘徊?)をしたりして、
近所の小屋で夜が明けるまで過ごします。
ポイント
第1章「桜花抄」のポイントは
・少年の冒険
・無力感
・不可能の自覚
・大人になることへの憧れ
でしょう。
それぞれ見ていきましょう。
少年の冒険
この話では中学生の貴樹が明里に会うべく、
電車を乗り継ぎ、1人で東京から栃木へ向かいます。
大人になると東京から栃木の移動は「ちょっとした遠出」くらいの感覚ですが、
まだ子どもの彼らにとってのこの距離はとても遠く感じられ、この旅は完全に冒険です。
この点において、
中1の終わり頃(12歳〜13歳頃)という設定は絶妙だなと思います。
大人と子どもの狭間にいて、やきもきしてしまう年齢にぴったりの年齢ですね。
(余談ですが、少年達の冒険物語の定番であるスタンド・バイ・ミーは12歳です。)
大雪で電車が遅れだした時に
遅延の可能性を考えていなかったというような発言も入っていて、
そう言ったトラブルも含めて、少年の冒険物語のような構成になっていると思います。
無力感
この話では、要所要所で無力感を感じざるを得ないシーンがあります。
・守られてるからこその無力
引っ越しによって同じ中学に行けないことを謝る明里に対して
明里が謝ることではないと言いつつも、
やるせなさからつい口調が強くなってしまう貴樹。
親の仕事の都合で引っ越すことはどうにもできないことがわかっているからこそ
もどかしい、そんな貴樹の感情が強く出ています。
また、明里が祖母の家から東京の学校に通いたいと主張するも
親から反対されてしまう旨の発言もあり、子どもゆえの無力さを実感するシーンです。
・自然災害への無力
携帯電話も持っていないので連絡も取れず、できることはただひたすらに急ぐこと。
それなのに、どれだけ急いでいてもどうにもできず電車は頻繁に長時間止まってしまいます。
また、時間をかけて書いた手紙も
乗り換え駅で電車を待っている時に風によってほんの一瞬で飛ばされてしまいます。
これらの描写によって、自然を前にすると人が無力であることを実感させられます。
不可能の自覚
そんなこんなで無事再会を果たした貴樹と明里。
雪の積もる道を歩き、桜の木の前に立った時にかつての明里と今の明里が重なり、
懐かしくも、目の前に“今の”明里がいることが嬉しい貴樹。
ここで2人のキスシーンに入り、
通常ならばこれでハッピーエンド!となっても良い展開です。
ですが、残念ながら
ここで貴樹はこの先ずっと一緒にいることができないと悟ってしまいます。
僕たちの前には未だ巨大すぎる人生が、茫漠とした時間が、どうしようもなく横たわっていた。
貴樹の心情を表した独白シーンです。
心が通じ合ったからこそ余計に辛くなりますね。
本当は手紙を書いてきたことさえも、今となっては伝えても伝えなくても変わらない。
どっちにしても明里といることはできないのだから。という絶望感さえも感じます。
ここめっちゃ良いですよね。
静かな映像と落ち着いた貴樹の声がマッチしてます。
こういった表現によるノスタルジックを起こすのが上手い映画だなぁとつくづく思います。
一方、明里も本当は手紙を書いてきたのに渡さず、そして伝えずに貴樹を見送りました。
彼女もまた、唇を重ねた瞬間にこの先は一緒にいられないと分かってしまったのでしょう。
大人になることへの憧れ
全体を通して、自分はまだ子どもで無力だから
惹かれあっていても明里と一緒にいられないという貴樹の心情が現れていると思います。
最後のシーンで貴樹は
明里を守る力が欲しいと強く思い、窓の外の景色を見続けていました。
それを求めて今後も生き続けてしまう貴樹の様子を示唆するかのような終わり方です。
コスモナウト
切ない話ですね。そして花苗の健気さに心打たれます。
私は全3章の中で最もこの話が好きです!
ストーリー
貴樹の同級生である澄田花苗を主人公に、高校3年生の生活を描く作品。
花苗は中学2年の時に転校してきた貴樹に惹かれ、
以来ずっと恋心を抱いてきましたが、
思いを告げられないまま高校3年生にまでなってしまいました。
そして日常生活はと言うと、
進路を決められず、サーフィンも最近は波に乗れずスランプ気味と焦る日々を送っていたのです。
対する貴樹は東京の大学に進学するという目標を決めていました。
ある日、貴樹に進路について何も決められず不安だと相談すると
貴樹も迷いなく生きているのではなく、不安でもできることをやっていると知り、
人知れず勇気をもらう花苗でした。
不安ばかりを感じるのではなく1つずつできることをやろう。
そう決めた花苗は少しずつスランプを抜け、夏の終わりには半年ぶりに波に乗ることができたのです。
そして、波に乗れた日の今日こそ貴樹に告白するぞと決意をします。
しかし、いざ今だという時になって花苗は貴樹へのその思いは届かないと悟ります。
今まで漠然と惹かれていたのが、なぜ惹かれていたのかを理解し、
それは同時に貴樹は自分のことを全く見ていないという現実を改めて認識することになります。
だから、結局その日も思いは告げられず、
なのにこれからもずっと貴樹のことが好きなのだろうと思い泣きながら眠るのでした。
ポイント
第2章「コスモナウト」の話のポイントは
・等身大の高校生
・田舎の持つエモさ
・ロケット
・「澄田花苗」の役割
でしょう。
それぞれ見ていきましょう。
等身大の高校生
コスモナウトの主人公である澄田花苗は高校3年生にして進路が決められない。
通っている高校では姉が働いており、
姉はどう言っているのかと教師から問われてしまい、
自分の話で姉は関係ないと思って軽くへそを曲げる。
いわゆる普通の高校生が主人公だからこそ
この話はとても感情移入がしやすいと思います。
(正直、個人的には貴樹には感情移入できないですからね…。笑)
女子高生の苦悩やそれを乗り越えて前向きに成長する姿を描いて、
視聴者にも前を向くきっかけをくれる作品だと思います。
田舎の持つエモさ
舞台は鹿児島の種子島です。
1章と3章の舞台が東京なので、失礼ではありますがここは田舎です。
だからこそ、
田舎の夏の風景やセミやカエル、虫の鳴き声が馴染み、
暑い空気と爽やかな学校生活の対比が鮮やかに感じられ、
今はもう過ぎ去ってしまった学生生活を懐かしく呼び起こしてきます。
空気感がエモいってやつです。
ロケット
この話では重要なタイミングでロケットが出てきます。
行くあてやゴールがないのに、それでも何かを探し求めている姿その象徴としてロケットが使われているのでしょう。
そのロケットの姿が自分の人生に重なり、
今でも明里を求め続けていることがわかります。
また、花苗目線では
ロケットのその闇雲に何かを掴もうと突き進む姿勢に惹かれ、
それは、そのまま自分が貴樹に惹かれていた部分と同じだとロケットを見て気付きます。
同時に、だからこそ貴樹は自分を見ていないと理解せざるを得ないし、
今後もそれは変わらないのに好きであり続けてしまうと思ってしまいます。
切ない。これはかなり切ない。
そんな2人のゴールのない旅への旅立ちの表現として
ロケット発車のシーンが用いられたのではないでしょうか。
そして、それがこの映画全体のテーマのようなものであるから
このシーンが映画のポスターとかで使われているんだろうな。
「澄田花苗」の役割
なぜ、この話だけ貴樹が主人公じゃないんだろう。
そう考えた時に貴樹の生き方を考えて、とある答えにたどり着きました。
花苗が可哀想でかなり悲しいですので、覚悟して見てください。
それは、、、
ずばり、、、
貴樹の中に
あまり種子島での生活の記憶がないから
だと思います。
それなので、貴樹目線にしようにも、彼の記憶にないからできない。
そのことを表現しつつ、
彼の高校生活を描くべく選ばれたのが「澄田花苗」だったのだと思います。
ずっと明里を求めてきた貴樹にとって、
明里との文通もなく、メールもなく、近くにいる訳でもなく、
ただ遠くばかりを目指していた当時の記憶や思い出はほぼ0なんだと思います。
遠くを見て、周囲を見ていなかったのでしょう。
なので、
この話の中の数少ない貴樹の独白シーンは
ロケットを打ち上げ場まで運ぶ貨物列車について
澄田が時速5キロだと言うことで、桜の舞う速度を言った明里と被るシーンだったのでしょう。
記憶にあるのは、あくまでも明里が関係しているところというのが
視聴者としては澄田の健気さが報われなさすぎて心が痛みますね。。。
秒速5センチメートル
ほぼ実際エンディングソングみたいな話でしたね。
主題歌「One more time, One more chance」への
入り方が完璧すぎて鳥肌が立つやつです。
大ブームを起こした「君の名は。」がボーイミーツガールなお話ならば、
これはボーイ・ドント・ミーツ・ガールなんですよね…
会えないことでその後の展開を視聴者の想像で補う感じですかね。
これをハッピーエンドと捉えるかバッドエンドと捉えるかは人それぞれだと思います。
また、人それぞれで良いと思います!
なので、これから私が記すのが正解というわけではありません。
この作品は、個人が感じ取った感想を大切にして欲しいです。
ストーリー
大人になった貴樹を描く作品。
貴樹には3年間付き合った彼女がいましたが、
彼女は貴樹の気持ちが自分に向いていないと分かっていて付き合い続けていたものの、
とうとう無理だと決断し、彼女から別れを切り出します。
また、貴樹はここ数年ただ闇雲に“何か”を求めて働き続けていましたが、
日々奪われていく自分の精神的な弾力に嫌気が差し、
ふと緊張の糸が切れたように仕事を辞めてしまいます。
そしてある日、明里と見た思い出の桜の木を見に行った帰り道、
踏切で1人の女性とすれ違い、その女性にふと明里の面影を感じます。
その瞬間、振り返るときっと彼女も振り返るだろうと感じ取ります。
2人が振り返った瞬間、電車が視界を遮ります。
電車が通過し、踏切が上がった時に貴樹が見たその先に女性の姿はありませんでした。
ポイント
第3章「秒速5センチメートル」の話のポイントは
・それぞれのパートナー
・主題歌
・貴樹の決意
ですかね。。。
ちょうど良い一言が思いつきませんでした。笑
それぞれ見ていきましょう。
それぞれのパートナー
明里と貴樹にはそれぞれ別のパートナーがいることが判明します。
しかしその後の展開は正反対ですね。
明里は結婚が決まる一方で、貴樹は別れることとなる。
それも、貴樹の独白では彼女についての情報は限りなく薄い。
澄田のパターンと同じで、
相変わらず貴樹は身の回りにいてくれる彼女のことを見ていなかったのでしょう。
明里は貴樹との思い出を良い思い出として生かしつつも前を向いていて、
貴樹は前を向いてると自分に思い込ませるような努力はしているものの、
実際はやはり明里の影を追い続ける日々を送っていたことが分かります。
主題歌
山崎まさよしさんの「One more time, One more chance」とともに、
物語が背景で流れていきます。
今のそれぞれや、当時のそれぞれが見ていた風景、様子が描かれます。
貴樹は今までも幾度となく、
そこにいるはずのない明里を見たような気がしていたのですね。
個人的にここで好きなのは
言えなかった「好き」という言葉も
という歌詞の場面で種子島から出る飛行機を見つめる澄田が映るシーンです。
大人になった澄田よ幸せであれ…
ここ以外にも歌詞と映像をリンクさせてる箇所ばかりなので、
歌詞に注意しつつ映像を見ると楽しいです!
貴樹の決意
踏切が上がった後にそこに女性の姿がなかったことで
貴樹はようやく再び前を向いて歩いて行く決意をします。
ここで、今までは下向きに歩いている様子ばかりだった貴樹が
初めて少し上を向いて歩き出します。
もし踏切の先に明里がいたら、
出会えてしまったことで再び明里を追い続けることになってしまっていたでしょう。
明里は結婚するというのに。。。
すれ違ったにも関わらず、振り向くといなかった。
長年追い求めてきた“何か”にたどり着くも、それを手にできるのは自分ではない。
それに気付き、ようやく貴樹はきちんと前へ進むことができるようになったので、
ここまで思っていたのに再会できなかったのは残念ではありますが、
きちんと吹っ切れた点でこれは立派なハッピーエンドだと個人的には思っています。
ただひとつ、
果たしてすれ違った女性は本当に明里だったのか、
また、そもそも女性とすれ違ったということすら
貴樹の妄想が作り出した擬似体験だったのではないかという疑問は残っています。常習犯なので。笑
その辺はどうなんでしょうね。
最後に
ということで、
貴樹の初恋から踏ん切りをつけるまでを描いた全3章。
圧巻の映像美が続く1時間。登場人物がその後幸せになっていると良いですね。
もう少し細かい所まで描いた小説版もあるらしいですが、
私はこの作品はこの映画で完結しているので
読んでいないし、今後も読まないような気がします。
もしかしたら残された疑問点が小説内で明かされているのかもしれませんが。
映像が美しい作品なので、
画質が良いU-NEXTでの視聴がおすすめです。
月額が高いと避けられがちですが、31日無料トライアルで見れば問題なしです。
他にも作品が充実していたり、漫画も読めるので私は重宝しています。
※無料トライアルだけで済ませたい場合は解約の手続きをお忘れなきように!!
————————————————————————
本ページの情報は2022年5月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにて
ご確認ください。
————————————————————————
それでは!!
コメント