読書の秋。
刺すような暑さから解放されて、夜は肌寒く感じる日も増えましたね。
小説「私たちが星座を盗んだ理由」を読んだので感想を。
短編集なので、1作1作の感想はサクッと簡単に記します!
この後私が記す感想も、決してそれが正解ではないので、悪しからず。
優しさと悪意が入り混じった作品ばかりです。
皆さまもぜひ読んで感情を掻き乱されましょう!笑
各物語
恋煩い
アキ、シュン、トーコの幼馴染3人組は現在高校2年生。
いわゆる青春真っ只中を生きる年代ならではの題材なのでしょう。
女の子2人と男の子1人の3人組なので、色恋沙汰がないわけがないよねと思いながら読み進められます。笑
アキは幼馴染のトーコの幸せを祈っているのに
彼女から間接的に、それでもストレートな悪意を向けられていたという事実は辛いですね。
まだまだ3人の関係性は嫌でも続くのに、これからは今まで通りにはいられない。
かと言って、その先は物語として描かずに読者の想像に委ねるというイヤミスのお手本のような作品ですね!
シンプルだけど結構好きだなって思って読んでました。
犯人やその手法が無駄に凝っていたり、読者の想像の斜めを行ってやる!っていう空回りがありません。
妖精の学校
これはイマイチ分からなかったな…
最後の1行、これで調べると沖ノ鳥島が出てくるから
沖ノ鳥島に作られた場所で、子ども達を盾にして攻撃から身を守っていたということは理解できるんです。
敵(異国?)もさすがに子どもには攻撃してこないですからね。。
ただ物語として分からなかった。笑
おそらく私の読解力不足もあるんですが、ヒバリの記憶にある泣き虫な少女は誰?!定期的に出してきた意味は?!結局そこは明かさずに終わるの?!
となりました。
終始ふわふわっとした空気で、何となくホラーちっくにしてみたよって感じに思ってしまった。
嘘つき紳士
人生に絶望した若者が再起を図り、軽率に犯罪に手を染める話です。笑
主人公への感情移入は完全に0です。色々真っ当に考えてる風出してるけど、まぁクズです笑
舞台が池袋とあって、馴染みある風景が浮かんで話としてはとても楽しく読めました!
いくら地方と東京とは言え今の情報社会において恋人の死の情報が届かないことなどないでしょう。
そんな点からも明らかに怪しかったキョーコはやはり純粋に悪でした。
キョーコを騙す過程で少しずつ、わずかながら真っ当に生きる決意をした主人公は全てを知った後どうしたんだろう。
終の童話
タイトル通りの童話っぽい話でした。
最初の数ページは正直「ああ、この話苦手だなぁ」って。
登場人物の名前が横文字すぎる!誰が誰だ!!!と思いつつ読んでいました。笑
それでも、最後にはどっぷり物語の中に引き込まれていました。
石像にされたり、数年の時を経て石像が人間に戻ったり…
どうしようもなく非現実的なフィクションなのに感情が憑依したかのように泣きそうになりました。
読み終えた後、一番好きなのは結局これでした!笑
正義とは一体何なのか?
ワイズポーシャは一貫して自身の正義を貫いていて、
物語としての“犯人”は彼であったけど、彼をそんな攻め立てる言葉で形容できないなと思いました。
彼はとても優しい犯人だったから、傷付くことが分かっている人に希望を与えず絶望させるしかなかった。
とても苦しい思いの犯行だったんだろうな。。。
何より、この作品は最後にウィミィはエミリを生き返らせたのか?
という点の解釈が別れる作品でした。
私は生き返らせてないと思います。
人の温かさがないことを再認識し、エミリの石像と共に崖から降りたかなとか考えてしまいました。
私たちが星座を盗んだ理由
表題にもなっている話。正直これはめちゃめちゃ心臓が痛くなりました。
自分が姫子の立場ならどういう感情になるだろうと…
病気の姉が悪いわけじゃないし、姉のことが好きで姉妹仲も良い。
だからこそ、ぶつけどころのない感情がずっとやりきれない。
そんなのをまだ小学生の低学年の頃に経験するなんて、負荷がすごいよ…
自分がナースコールを押せなかったから姉は死んだと自分を責め、姉の夢を背負って看護師として働く健気さ。
そんな姫子に対して「君のせいじゃない」と優しい言葉をかける夕兄ちゃん。
これは!!
最後の作品にして純粋なラブストーリーか?!
と少し期待をしました。
が、残念。
夕兄ちゃんは結婚して子どももいました。
数十年の時を経て思いを伝えようとした姫子の絶望感が十二分に伝わってくる最後でした。
タイトルの意味もなるほど〜となって、
そこ自体はとても温かい気持ちにしてくれました。
感想まとめ
これは講談社文庫の夏ミス2019として、
大好きな辻村深月先生が推薦するミステリー作品ということだったので即買いして読んだ作品です。
短編集やイヤミスが得意ではないので
読む前はとても不安だったのですが、いざ読んだら楽しいものですね。
生きづらい世の中を少しでも生きやすくなるように
と読者を勇気付ける作品ではなく、むしろ絶望を突きつけてくる作品ばかりなので、
読むのは少し元気な時にしましょう!笑
全編通して共通するのは最後の余白が長いということ。
これは物語のその後を読者へ任せているということです。
読む人の数だけ物語の結末が存在している。そんな作品です。
皆さんもぜひ読んで、
私と違う結末を想像したなら「ここはこうじゃない?」って言ってください。
また違った考えを見れて楽しいと思うので!
では!!!
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